INTERVIEW会員インタビュー
会員インタビュー
神野織物株式会社
神野織物株式会社 /
代表取締役 神野 哲郎 氏
お客様の希望を叶えるオリジナル商品を制作自分たちにできることを考え実践
吹田市片山町にある神野織物株式会社様は、明治時代に創業された約120年の歴史を持つ繊維製品の卸売会社です。現社長は5代目で、就任されてから手ぬぐいやタオルなど、お客様の希望に沿ったオリジナル商品の制作に力を入れ始め、消費者に直接販売するネットショップにも取り組んでおられます。
今回、新型コロナウイルス感染症の影響によって増えた残糸に困っている協力工場のために、クラウドファンディングで「残糸削減プロジェクト」に取り組み、余った糸を使って作るタオル「nokori-ito(ノコリイト)」を制作されました。
自分たちにできることは何かを考え取り組み続ける、 同社の神野社長と辻部長にお話を伺いました。
創業の経緯についてお聞かせください。
元々は近江商人の家で生まれた私の曾祖父が、明治時代に北海道の小樽の地で、綿花を大阪で仕入れて満 州(現中国)に輸出し始めたことが事業の始まりでした。その後、昭和恐慌などの影響もあり、祖父の代に北海道の店を閉め、仕入れをしていた大阪の店を残し、手ぬぐい中心の問屋業となりました。
昭和30年頃になると、日常生活でタオルが使われるようになり、タオルの取扱いも増加しました。当社は工場から仕入れたものを各地の小売店に卸す二次問屋に販売する一次問屋でしたが、昭和40年代頃までは二次問屋の力が強かった時代でした。
今ではそれが段々と変わってきて、インターネットで個人や企業から直接別注品(オリジナル商品)の依頼を受け、納品する販売形態が増加してきました。また、当社は海外向けに手ぬぐいを販売するネットショップも展開しています。
貴社の強みを教えてください。
元々綿布などを扱っていた問屋ですので、手ぬぐいやタオルなどの繊維面にデザインを施す商品の企画には強いです。
手ぬぐいは剣道をしている方は必ず使うので、剣道連盟との繋がりも長く、フランスで開催される剣道大会でも手ぬぐいを持って行き販売させてもらっています。
タオルは、今治や泉州などのたくさんのタオル工場に協力してもらっているので、柄や納期、価格など、お客様の希望に合った商品を提供できます。オリジナル商品といっても、自社商品ではなく、お客様からデザインのデータをいただき、それを協力工場に依頼して制作し納品します。
自社工場を持つと、その工場で作れるもので営業することしかできませんが、協力工場に依頼することにより、各工場の得手不得手を把握し発注することができるので、工場を持たないことが私たちの強みになっていると思っています。
残糸削減プロジェクトについてお聞かせください。
タオルを制作する際、工場では注文された量より3~10%多めに糸を準備します。工程で不良品が生じたりした際、出来上がり枚数が注文枚数に足りなくなることを防ぐためです。 そのため、タオルを織ると必ず糸が余り、その糸は通常1年経つと焼却処分されてしまいます。その量は、ある協力工場で聞くと、年間フェイスタオル5万枚分にもなるそうです。
さらに、昨年は新型コロナウイルス感染症の影響でイベント関係が急に中止になり、既に注文を受けていたタオルの製造にもストップがかかり、大量の残糸が生じました。
余った糸が捨てられてしまうのは、資源ロスにつながり、環境にも悪影響を及ぼします。そこで、余った糸を再利用して新たなタオルを制作できないかと考え、「残糸削減プロジェクト」を企画し、クラウドファンディングで資金調達を図りました。賛同いただいた方への返礼品として制作したタオルが「nokori-ito(ノコリイト)」です。
残糸タオル自体は以前からありましたが、一般的にはあまり知られていません。知らない人に知ってもらえれば、ごみとして処分される残糸を減らすことができると考え、クラウドファンディングの仕組みを活用しました。余った糸といっても、今治で織られた糸なので品質は高く、厚手で丈夫に織られているので、長く使っていただけるタオルです。また、ハンガーでも干せるサイズで制作しているので干すのも場所を取らないと好評です。今では一般にも販売しています。
これからの課題について教えてください。
環境負荷を減らすということはこれからも考え続けなければならないと思います。私たちは今回のプロジェクトで、国連が掲げる「持続可能な開発目標(SDGs)」の17目標の内の6つに取り組んだこととなりました。SDGsに取り組むことは、企業のイメージアップにもつながるので、たくさんの企業の方にこのタオルを販促品などで採用していただければと思います。
当社は若い年代の社員も多いので、柔軟な発想を基に、これからもこうした取り組みを続けていきます。
― お忙しい中、貴重なお話をいただきありがとうございました。今後益々のご発展を祈念申し上げます。