INTERVIEW会員インタビュー

会員インタビュー

木下名酒店株式会社

木下名酒店株式会社
代表取締役 木下 靖雄 氏

こだわりの酒と食品の専門ショップ

木下名酒店株式会社は、現社長の父である初代社長が昭和 46年に創業し、千里ニュータウンとともに歩み続けて、今年で50年目を迎えた酒類販売店です。

平成に入りディスカウント店に業態を変えて、「SKY」という店名で吹田市内を中心に8店舗を構えるまでに拡大をしましたが、規制緩和による競合店の急増により経営環境が悪化してきました。そこで、2代目社長として後を継いだ現代表取締役の木下靖雄氏は、他店と競合しない“こだわりの専門ショップ”に業態転換し、生き残りを図りました。

今回は、後継者として経営革新に取り組んだ木下靖雄氏に お話を伺いました。

貴店の事業内容について。

私は、平成元年に父が創業した酒類販売店に入社しました。手伝い始めた当初からワインに興味があり、毎年フランスへ自然派BIOワインを買い付けに行くことなどもさせてもらいました。その後、酒に関する知識を深めようと、シニアソムリエ(ソムリエの上級クラス)や日本酒学講師の資格も取得しました。

会社の経営を任せられると、ディスカウント店からの脱却を図るため、国内の人気の地酒や本格焼酎・地ビール・日本ワイン・有機米・オーガニック食品などを求めて全国の産地を訪問し、問屋を介さず生産者から直接商品を買い付けることに取り組みました。

現在は店舗網を縮小し、阪急南千里駅前の1店舗に絞り込みましたが、他店と全く商品が競合しない“こだわりの酒と食品の専門ショップ”のスタイルを確立し、新しい業態で売上を伸ばしています。

「吹田のゾウ」を作られたきっかけは…。

吹田商工会議所青年部が企画した吹田慈姑を使用した焼酎「芽吹」を発売当初に私の店で販売させて頂いた事をきっかけに、独自の地元オリジナル酒の製造を考えるようになりました。

そこで、再度ブームになりつつあった日本酒でのオリジナル酒を考えましたが、吹田市産のお米がなかなか見つからず諦めかけていました。そんな中、吹田市内の朝市でお米を販売していた吉田俊之さんに出会い事情を説明すると、市内で栽培しているお米を快く分けてくださる事になりました。

お酒の名前も地元に因んだものとしようと考えていたところ、店の近くの菩提池の遊歩道で、この佐竹台の地よりゾウの化石が発掘されたとの案内板を見ました。吹田市立博物館に行き調べると、その象は“アケボノゾウ“といって日本固有種の象であり、吹田市内4箇所からも象の化石が発掘され、博物館にはゾウの歯の化石を展示されていました。「これは面白いし、街おこしにもなるのでは!」と想い、そのお酒を「吹田のゾウ純米大吟醸」と名付けました。

この「吹田のゾウ」のお酒は味にもこだわりましたので発売当初より売れ行き好調で、今では年間販売 3,000本以上(720ml換算)となる大ヒット商品となりました。

このお酒は、地域との関連が深く、愛らしい象の絵のラベルや名称から、様々なTV・新聞・雑誌等にも取り上げられました。G20大阪サミットでは提供酒にもなりました。吹田出身のノーベル賞受賞者・吉野彰氏に全国放送のTV番組の中で飲んで頂いた事もあります。

そして、私が所属していた吹田商工会議所青年部のメンバーも様々なイベントで吹田のゾウを地産品としてPRしてくださいましたし、吹田市内の多くの飲食店様でも定番酒として扱って頂けるようになりました。

また、お店の近くにはホテルがあり、インバウンドなどのお客様もいたことから免税店の認定を受け、「吹田のゾウ」以降も大阪産地酒、大阪産ワイン、大阪産地ビールなど地元に因んだオリジナル酒を続々と企画・販売しました。2025年には大阪・関西万博が開催されますので、海外のお客様が増えることを想定しています。

コロナ禍の影響はどうですか?

コロナウイルス感染症拡大の影響により飲食店様への販売は激減しました。ただ、その分「宅飲み」されるお客様が増えたので、来店客が増加し売上を多少カバーしています。

お店のある南千里駅前周辺は、近年、多くの団地がマンションへと建て替わり、移り住んで来られる方が非常に増えたため、活気のある地域となっていることも追い風となりました。

今後の展開について。

今日では、寿司店は世界のどの街にもあり、「和食」はユネスコの無形文化遺産に登録されています。私の店で販売しているような本格的な地酒や焼酎などは、海外での消費は少しずつ増えてはいるものの、まだ決して多くはありません。

以前、ハワイとイタリアで開催されたイベントに出店した際には、現地の方が地酒に予想以上に興味を持ってくれましたが、輸出には高額な関税や費用がかかり手続きも複雑なため海外への展開は時期尚早と判断しました。

コロナ禍が収束すれば、海外から大阪や吹田に来訪いただき、当店の取り扱う美味しいお酒のファンを拡大し、それから輸出や海外出店にチャレンジしていきたいと思っています。

貴重なお話をありがとうございました。今後益々のご発展をご祈念申し上げあげます。

INFORMATION

木下名酒店株式会社

吹田市津雲台1-1-30 トナリエ南千里102

TEL : 06-6877-4339 HP : https://www.kinoshita-meisyu.com/